【1978年12月】
インドに行ったのなら、鉄道は別として見たいものがありました。「タージマハール」です。インドの観光パンフレットのよく出てくるマハラジャのお墓ですが、本物をこの目で見ておきたかったのです。他の人はデリーの機関区に出掛けたのですが、私は大きいのは興味はなく、それより「タージマハール」を選んだのです。だから一人旅になりました。

タージマハールは「アグラ」にあります。デリーにはニューデリーとオールドデリーの2つの駅があって、アグラ行きの蒸機機関車特急である「タージエキスプレス」はオールドデリーからの発車でした。クーラーの付いた1等車で行こうと思いましたが、改札で1等は売り切れと言われて普通車で行くしかありません。ただしクーラーは壊れていて効かないと言ってはいました。普通車は木のイスで満員。座ることができません。しかたなくデッキへ。ここも人がたくさん乗っていました。


タージエキスプレスを引く蒸機機関車

駅や橋で写真を撮ろうとするとダメと乗客から遮られました。鉄道は軍事施設のひとつなんですね。逆に駅を出ると「撮れ!もっと撮れ!」とせかされました。


隠し撮りで撮った駅風景

停車駅では物売りがやってきました。お猪口と湯飲み茶碗の中間くらいの大きさの、素焼きの容器に入れた紅茶を、みんな飲んでいます。乳と紅茶のインド式紅茶「チャイ」です。発車するとみんな一斉に素焼きの容器を窓から投げ捨てていました。まあ、素焼きだから土に返るからいいのでしょうが……。

アグラに着くとガイドや乗り物がワッとやってきました。たいていは追い払ったのですが、一人だけしつこくずっと着いてきたのでガイドを頼みました。ただでさえ語学力がないのに、ヒンズーなまりの英語は理解するのに苦労しました。


これがタージマハール。やはり現物はちがった!!


アグラフォート、リスが走りまわっていた。

タージマハールとアグラフォートなどをガイドの輪タクで回り、帰ろうと思ったのですがデリー行きはなし。ガイドが「バスがある、これだ」と指さすバスに乗りました。ヒンズー語は読めないので信じるしかありませんでした。

いわゆる路線バスで、イスは木製。まわりは全員インド人。みんな乗車賃をごまかそうとするのか、車掌と乗客がどなり合っていました。3時間以上乗ってニューデリーの街の明かりが見えた時はホッとしました。3輪車のタクシーでホテルに無事着いたときは緊張が解けて、腰がくだけそうになりました。ホント。

現在では、こんな無茶な行動はしないと思いますが、なかなかスリリングで、直のインドに触れた一日でした。


多分、バスの乗車券だったと思う……