1984年3月

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マルコス政権がクーデターで倒れる前の話です。マニラ空港では、物売りの子供がワッと寄って来たりして、荷物をシカッと握りしめました。国内線に乗り換えてネグロス島に行くわけですが、バスに乗ったら、国際線の真向かい(要するに同じ空港)でした。ただ移動しただけ。いきなり警官が来るので何事かと思うと、シェリフのバッチを買わないかと言うのです。NOと答えると、じゃ帽子はと話を変えるのです。銃が欲しいと言えば売ってくれるかしらん。

他で聞いた話では、金を渡せば白バイもサイレンを鳴らして先導してくれるそうです。そうそうマニラではヤミの両替が堂々と商売しています。ヤミだとレートが高いのです。ただし一度替えると、正規のルートではドルには再両替はできません。これもまたヤミがあって、今度はレートより安くて、買い叩かれるようです。

ネグロス島は世界の砂糖壷と呼ばれるほどの島です。中心都市はバコロド。泊まったホテルは天井にヤモリが走ったり、ガマガエルが床をピョンピョン飛び跳ねるようなところです。ただし、マニラのような喧騒とは無縁の島です。ゲリラが出現するし、警察は役立たずなので、各精糖会社は自前で警備兵(銃を各自持っていたので警備員じゃない)を雇っていました。撮影中もライフルを持って見張っているのです。もっとも球は3つくらいしか持っていなくて撃ったことはないと言っていましたが。


砂糖キビ列車の合間に、地元の人が簡単なトロッコを馬にひかせたものも存在します。列車とハチ合せになると、慌てて線路からトロッコを外し列車をやり過し、また線路に乗せて走ります。

砂糖キビ取り入れ蒸気機関車というと、以前NHKで放映した「SLドラゴン(だったと思うけど)」や、機芸出版社発行のRAIL TO THE SETTING SUNで、「ビクトリアス」、「ロペス」、「ハワイアン」などの精糖工場が紹介されています。


マスコス体制からアキノ体制になり、砂糖の国際価格の暴落でデモや、ゲリラが出没してネグロスでは死人も多く出たようです。あの蒸機たちはどうなったのだろう。のどが渇いてかじった砂糖キビの甘さは忘れられません。

新橋のフルーツ屋に砂糖キビが売られていたので買ってみたけど、ひと口かじってあまりの味に残りは捨ててしまった。