元東急の青がえるが、赤がえるに
2500系


雪の中を走る2500系
【木島駅付近】

長野市内を東西に走る幹線道路、国道19号をながでんの線路が横切っていて、朝夕の踏切による交通渋滞の解消のため、長野線の連続立体化が県と市から持ち上がってきた。高架方式、掘割方式などいろいろな案が提案されたが、最終的には最も経費はかかるが将来を考えて“地下方式”に決定、法律的には地下線に当てはまらず“長いトンネル”になる。従ってこの区間を走る車両はA基準に適合させるなければならず、当初は現有車両を改造する計画だったが、特急2000系OSカー以外のほとんどの車両を改造するには費用がかかるので、他社の適当な車両を探すことになった。

初めは東急3000系が候補に挙がったが、長野電鉄側で難色を示したらしい。当時、東急3000系は名鉄に大量譲渡され、大手私鉄同士では珍しいと話題になっていた。東急では3000系の新車への置き換えが行われていたから、3000系が提案されたのもわからないではない。しかし、やっばり長野電鉄側としては更新車の3000系ではなく、できるだけ長く使える車両の方が良かったのだろう。

次に提案されたのが「青がえる」5000系。雪が多く、急勾配が続く、なかでんの路線に改造して譲り受けることに決定した。この間に日光特急である国鉄157系の台車と器機を流用して車体は新造する提案もあったらしい。ながでんに東急5000系が大量入線のあと、全国の地方私鉄に続々と5000系が譲渡された。長野県では上田交通、松本電鉄、他では岳南鉄道、福島交通、熊本電気鉄道にも譲渡されている。クハ5150形はすべてながでんに来てしまったので、他の私鉄ではクハが不足し、デハやサハを改造してクハとしたり、中間車に運転台を付けた切妻ままの車両もあったりした。


東急時代の5000系。東横線で主力となって働いている頃の姿。
【渋谷駅】昭和42年7月

特急2000系と先頭の形状が似ているので、塗装は赤主体のものに。「青がえる」変じて「赤がえる」というわけ。私はクーラー化されて塗装が変わった特急車の最近の新塗装は“??”だが、「赤がえる」の塗装は出色のデキだと思っている。好きです。運転室上部の塗り分けが初期と後期では違っているよう。後期の方が赤の比率が大きく前面まで回っている。この姿の写真は撮影していない。

耐寒、急勾配対策、押込形ベンチレター(国鉄165系急行形などと同じ)への交換、列車無線取付、などの改造が施された。台車はTS-301形のまま、直角カルダン制御。このへんは最近のことで、実物誌などに詳しく出ているので省略……。最も大きい改造は運転室の拡大だと思う。東急5000系は乗務員扉が内側に開くカタチで、客室との仕切も同様で、相当運転室は狭かったらしい。ながでんの冬の運転では厚着をする必要があったので運転室の拡大は好評だったらしい。譲渡元の東急でも同様な改造をして欲しいと言われたと聞いたことがある。

東急車輌が発足して、初めての車両が5000系で、世間をあっと言わせてやろうという意欲車両ではあったが、乗務員には不評な部分もあったということかなっ。5000系の後、東急車輌は軽量技術を磨き、ステンレス車両を造るようになったのはご存知のとおり。ながでんでは2両固定編成を2500(C)、3両固定編成を2600(T)とし、編成ごとにナンバーが振られ、末尾の数字が揃うように形式が定められていた。当初は2500系が7編成14両、2600系が4編成12両の計画であったが、最終的には2500系10編成20両、2600系3編成9両、合計29両になったようだ。


右に見える東急時代の塗装のままの5000系は
部品取りのためにもらったと言われた。
東武鉄道から来た400系が部品不足のため制御方式を変えざるを得なかったので
余分に譲ってもらったのだろうか。
上下とも【須坂駅】
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譲渡車とはいえ、新車のように改造されて走っていたが、長野オリンピックを前に、車両保守の合理化と輸送力増強を目的に、営団地下鉄3000系を改造した3500系に置き換えられた。その中でもC10(モハ2510、クハ2560)は、廃車後、須坂長野東インターチェンジ近くの「トレイン・キャラリー」に展示保存されている。あちこちの鉄道関係ホームページでトレイン・キャラリーの紹介がされているが、残念ながら私は行ったことがない。そのうちに行ってみます。最後まで残ったのはT2編成。3500系の予備車として残ったが平成98年初めにとうとう廃車になった。

さて2500系・2600系の形式ですが、元となった東急の車号との対照リストにしようとしたが挫折……。手元の資料が完璧ではなく無理。多分こうだろうということで掲載します。間違いがあったら指摘ください。

私は東急沿線に住んでいて、大井町線を走っていた5000系にはよく乗っていたので、もしかしたら乗ったことのある車両も、ながでんに来たのかもしれない。


2500系
←湯田中          制御車(クハ) 電動車(モハ)         長野→
C 1

クハ2551
モハ2501
東急電鉄から譲渡

元東急クハ5155
廃車
元東急モハ5035
C 2

クハ2552
モハ2502
東急電鉄から譲渡

元東急クハ5153
廃車
元東急モハ5037
C 3

クハ2553
モハ2503
東急電鉄から譲渡

元東急クハ5151
廃車
元東急モハ5029
C 4

クハ2554
モハ2504
東急電鉄から譲渡

元東急クハ5152
廃車
元東急モハ5023
C 5

クハ2555
モハ2505
東急電鉄から譲渡

元東急クハ5156(元モハ5020)
廃車
元東急モハ5019
C 6

クハ2556
モハ2506
東急電鉄から譲渡

元東急クハ5154
廃車
元東急モハ5039
C 7

クハ2557
モハ2507
東急電鉄から譲渡

元東急クハ5157(元モハ5022)
廃車
元東急モハ5021
C 8

クハ2558
モハ2508
東急電鉄から譲渡

??
廃車
??
C 9

クハ2559
モハ2509
東急電鉄から譲渡

??
廃車
??
C 10

クハ2560
モハ2510
東急電鉄から譲渡

トレインギャラリーに保存展示
廃車
トレインギャラリーに保存展示
トレインギャラリーは閉店。移送され総合車両製作所で復元される予定

2600系

←湯田中

電動車(モハ)

付随車(サハ)

長野→

T 1

モハ2601
サハ2651
モハ2611
東急電鉄から譲渡

元東急モハ5036

元東急サハ5367

元東急モハ5033
T 2

モハ2602
サハ2652
モハ2612
東急電鉄から譲渡

元東急モハ5012

元東急サハ5356

元東急モハ5011
T 3

モハ2603
サハ2653
モハ2613
東急電鉄から譲渡

元東急モハ5014

元東急サハ5357

元東急モハ5013
※すべて廃車


【小布施駅】


4両連結用のジャンパー栓が見える【須坂駅】


【須坂駅】


【須坂駅・車庫】

模型制作MEMO

元が東急の有名な車両なので、16番でもNゲージでも模型化には苦労しない。16番では完成品が出ていたし、Nゲージではグリーンマックスの東急5000系のキットがある。先頭車のおでこの加工に一工夫が必要。

外観的には押込形ベンチレターと列車無線の屋上が変更のポイント。前面にカバー付のタイフォンをつければそれらしくなる。塗り分けも大変だが、特急2000系の最新塗装に比べればラク。側面のリブに沿ってマスキングテープを貼っていけばいい。

マイクロエースから初期塗装と後期塗装、2種類が完成品で発売されている。